蒼夏の螺旋

   “いい夫婦は ふうふうふう?”
 


いかにもな語呂合わせだが、
11月22日は日本では“いい夫婦の日”とされており。
毎年、芸能人やその年の話題になった人などが
ご夫婦で“いい夫婦”と冠せられて表彰されていたりする。

 “そういや、毎年ワイドショーとかで言ってるよな。”

今年は直前が“流行語大賞ノミネート”で、
しかもボジョレ・ヌーヴォー解禁でも沸いてたんで、
なかなか扱われておりませんが。

 “あべのみくすで、倍返しだったもんなぁ。”

何ですか、そりゃ。(笑)
え? 円安でボジョレが高かったらしいって?
おやおや、ちゃんと観るトコは観てますね。

 “俺としては、
  22日っていったら毎月
  “ショートケーキの日”だってことの方が
  親しみもあるんだがな。”
  (上に“イチゴ(15)”がいつもあるから、だそうです)

食いしん坊将軍でもあるロロノアさんチの若奥様としては、
関心の向く方向が随分と違うようで。
それでも、

 “夫婦かぁ…。”

ぽさぽさとまとまりの悪い髪の乗っかった童顔に、
ひょろりと細い腕脚に薄い肩や胸。
そんなせいか、服のサイズは
ティーンズ向けの、しかも女子高生用で十分間に合い。
今日は単なる買い物だしと、
特に気張ることもなく、
ボトムのフリースパンツと
Pコートっぽいジャケットそれぞれ、
カラーもスケールも微妙に違う
別口のチェック柄という
ちぐはぐな着合わせをしていたところ。
制服だろに超ミニスカをはいた女子高生たちから、
すれ違いざま、
かーわいいvvと囁かれちった愛らしさも相変わらず。

 「う?」

勿論というか、まさか自分のこととは思えずで、
可愛いって何がだ? はやりのマスコットとかか?と、
周囲をキョロキョロしてしまったお茶目さ加減も含めて。
通りすがった皆様が、

 「あら可愛いvv」
 「あれって今時のトレンドよねぇ?」

などと、ご注目くださるほどのタレント性を持ちながらも、

 「あ、いっけね。」

こんなコトしてる ばーいじゃねぇやと、
今日のタイムセール目指してスーパーへ急ぐ。
陽が落ちると てきめん冷え込む今日この頃なので、
今夜は温かいものでホッカホカだと、
メニューもしっかと決めての一点集中。
見栄えこそ気張ってはないけれど、
これでも勇んで買い出しに来たのだからして、
目指す目玉商品を取り逃しては何にもならぬ。
スェードのハーフブーツで踏みしめた、
ショッピングモールのプロムナードに敷かれたタイル、
キュキュッと鳴らすと。
生鮮食品売り場を目指して、
たったかと小走りになった奥方で……。





 「じゃん♪」

アレ以降、
奥州筆頭 云々をちゃんと宣して
帰っておいでの旦那なのかどうかは
今はまあ触れないでおくとして。(笑)
今日もなかなかの冷え込みとなった、
東であるほど早い日没後。
きっちりと鍛えておいでの、
元剣道チャンプだったゾロさんは、
実は 暑いのも寒いのも
まだまだそんなには堪えないらしいのだが。
それでも、寒いよりは温かい方が良いに決まっていて。
特に残業もないまま、それはそれは真っ直ぐに。
何だったら途中の壁や曲がり角も
無視して突き破ってしまいたいほどの一直線に、
最愛の我が家、もとえ、最愛の奥様が待つ我が家へと
健脚生かして戻って来れば。
大して関心はなさげなお言いようだった割に、

 「今日は“良い夫婦の日”だから、鍋だぞっ。」

大きめサイズの土鍋、蓋をガコンと開けて
湯気がもうもうと上がるのを
“どーだvv”と見せる他愛のなさよ。

 「お、旨そうだなvv」
 「熱燗もついてるぞvv」

袴という受け皿の上へ、白磁の徳利をほいと置き。
ラフな格好へ着替えて来たゾロへ、
まあまあ お疲れと、最初の一献のお酌をしてやって、

 「今日はウチだけ“猫舌の日”だぞ?」
 「猫舌の日?」

何だそりゃと小首を傾げたご亭主は、
そこは企画部所属だけに、
勿論のこと“良い夫婦の日”も御存知じゃあある。
ルフィも最初に
“今日は“良い夫婦の日”だから”なんて
言ってたほどだというに、
なんでまた、それに加えて“猫舌の日”なのかといえば。

 「熱っつい鍋を、
  ふうふう言って食から“ふうふうの日”ってな♪」

 「………それって、俺が突っ込んでも良いのかな?」

小鉢へ豆腐をよそっていたお玉片手に、
一瞬ちょっと固まりかかった旦那様。
そのお玉の柄のほうで、お向かいに座る奥方の丸いおでこ、
鍋越しに こつんとこづく真似をすれば、
てへっと微笑うお顔もまた温かい、
極上のメインディッシュだったりし。

 「ほら食え、今日のはゾロが好きなアンコウだぞっ。」

俺の好きな鳥のつくねも入ってるしなvvと、
つまりは好物づくしの特別鍋であるらしく。
室内はさほど寒いはずがないというに、
湯気の向こうの、
腕白だけど寂しがりでもある幼なじみのお顔がほころぶと、
ぎゅうと胸元を押さえ付けられての温かい。

 「そうか、ふうふうで猫舌の日か。」

だったらほれと、
それも入っていた豚の切り身を箸で掬い上げ、
ふうふうと吹いてから向かいの小鉢へどうぞと進呈。
わおvvと嬉しそうに笑う、
猫舌とは果たして縁があるんだかどうだかな、
食いしん坊な奥方と。
向こうは小鉢で、こちらは熱燗のお猪口を持ち上げ、
にぎやかな乾杯をしてから、


  さあ いただきますvv






  〜Fine〜  13.11.22.


  *大昔のNHKお子様番組の中に、
   3匹の子豚 ぶう・ふう・ううってのがありまして。
   私の記憶には欠片さえ残ってないのですが、
   母が言うには
   真ん中の子の絵のついたフォークがあったというのです。
   我が家のキャラクターグッズの第一号だと…。
   お、覚えてないってばっ。///////

  *それはともかく。(げほごほ)
   こちらのお二人の場合、
   夫婦云々以前に、
   甘いのと同時に奥方が食い意地張ってるので、
   どうしてもこういう路線は外せないと言いますか。
   まま、暖かくお過ごしくださいまし。


**ご感想はこちらvv*めるふぉvv

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